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Giuseppe Molaro(ジュゼッペ・モラーロ)

新しいおいしさ、安全なおいしさの探求

ジュゼッペ・モラーロ / 丸の内「ハインツ・ベック」エグゼクティブシェフ

おいしさと健康を両立するために、鍵となるのは食材そのもの。先人から伝わる伝統技術に、革新的な調理技術を加えて。独自の創造性を探求することで、新しい可能性が広がると思います。

祖父母から学んだスローフードの精神

イタリアで提唱された「スローフード」は、郷土に根付いた伝統的な食文化、食材、農法などを見直し、質のよい食材を提供する生産者を守る運動。健康や環境に配慮しながら、それを未来につなげていく食のエコロジー活動でもある。

Giuseppe Molaro(ジュゼッペ・モラーロ)

「愛情と敬意を持って食材と向き合うことは、農家を営んでいた祖父母から自然と教えられました。イタリアの食文化は先人から受け継がれているものが多く、私のルーツもそう。子どものころから、野菜や柑橘の畑で家族と一緒に手伝いをしているのが好きで、土と近い生活をしていましたね。種から育っていく野菜を見るのが楽しかった。そしてもう一つ学んだことは、旬を大切にすること。一番おいしく、栄養価の高い季節に収穫した食材を食べること。そして、その季節に収穫した食材を保存食にして無駄なく活用すること。地産地消とも通じる土壌からの恵みと旬を大切にする考えは、食のサステナビリティの一つだと思います」

トマトソース、なすのオリーブオイル漬け、アプリコットやプラムのジャムといった保存食を作る日には、まるでお祭りのように親戚一同が集まり、従兄弟たちと一緒に手伝いをした楽しい思い出があるそうだ。そして、食材をおいしく食べるためには、ひと手間かけねばならないという苦労も心に残っているという。

「料理人を志したのは、リストランテを経営していた父の影響もあります。学生時代から厨房に出入りしていたので、自然と料理人を目指すようになりました。父と一緒に働きながら自分の天職を見つけた感覚です。それからは、料理の腕を磨きながら、さらに食材への知識、こだわりを高めていきました」

地中海料理と和食のサスティナブルな共通点

イタリアで古くから食されている地中海料理(地中海食)は、健康的で環境にもやさしい食文化。2010年には「ユネスコ」の“世界無形文化遺産”にも登録され、国際的にもサスティナブルな食文化だと認められている。

Giuseppe Molaro(ジュゼッペ・モラーロ)

「日本にも地域に根付いた食文化があり、その食に対する姿勢、考え方は地中海料理と近いように感じます。地中海料理といっても、料理の名前ではなく、地中海沿岸諸国の伝統的な食生活のこと。旬を大切にすること、粗食であることが基本で、オリーブオイル、全粒穀物、野菜、フルーツ、豆類などが豊富に使われています。発酵食品をよく食べていることもイタリアと日本の共通点。肉類を控えめにしたバランスのよい健康的な食生活は、長寿にもつながります。イタリアでも添加物の使用が問題になっていますが、健康な体をつくり、日々の楽しみでもある食べ物が毒になってはいけない」

東京で料理を提供するようになってからは、日本ならではの食材も積極的に取り入れていて、日本で流通している食材はどんなものか、いまの季節の食材は何か、を市場に出かけてリサーチすることも心がけているという。

「新しい食材の味を知ると想像力が働きはじめます。そして『これはどう使えるか』『料理としてどう変化させることができるか』という疑問もわく。新しい食材を試すときには、自分が何を求めているか探りながら、さまざまな調理法を試し、オリジナルの料理に仕上げていきます」

新しいおいしさ、安全なおいしさの探求

食材の持つ力を最大限に活用するには、食材の組み合わせ、フードペアリングも大事だ、とジュゼッペシェフは語る。食材が持つうまみ、おいしさ、栄養価は、組み合わせによって相乗効果を生むことがあり、余計なものを加えないという意味で食べ物の安心安全にもつながるからだ。

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「伝統と革新を融合した料理が賞賛されているハインツ・ベック氏のもとで修業をしはじめてから、ガストロノミーの精神、独創的でアーティスティックな料理を学びました。それまで修業をしてきたリストランテでも使用する食材のクオリティ、食材を大切に扱う気持ちは同じですが、最先端の調理器具を使うことで一つの食材から新しい味、新しい色が引き出される楽しさは好奇心を刺激する経験です」

美食と健康を追求するハインツ・ベック氏の料理には、五感を刺激する仕掛けが随所にあり、ジュゼッペシェフも最先端の調理方法で独自の創造性を発揮している。

「エスプーマ(空気で食材を泡立てる)、遠心分離機(密度の異なる液体を分ける)、液体窒素(急速冷凍)、食品乾燥機(フリーズドライ)といった調理技術を活用することで新たな食感と味わいを発見することができました。子どもにとっての遊園地のような楽しさをみつけた気分です。例えば、ピューレー状にした食材をさらに粉末にし、同じ食材のジュースで戻すと、もとの食材よりもうまみが濃く感じられるようになるのです」

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しかし、あくまでも食材ありき、と強調する。発酵することでうまみが生きる食材、酢漬けにすることで日持ちする食材、伝統的な調理と最先端の調理技術は食材によって使い分けることを基本にしている。

「おいしさと健康を両立するために、鍵となるのは食材そのもの。先人から伝わる伝統技術に、革新的な調理技術を加える。独自の創造性を探求することで、新しい可能性が広がると思います」

モットーは“少なく、より良く”

食べることは、健康のためであり、将来の生活の基盤を作るもの。問題になっている食品ロスをなくすためにも、「少なく、より良く」を目指したい、とジュゼッペシェフ。

「料理は素材から。バランスのいい分量でおいしい料理をつくるために、食材選びにはこだわっています。生産者と信頼関係を深めて、仲間になることが大事。そうすることによって、品質の高い、あまり知られていない食材に出会うこともできます」

Giuseppe Molaro(ジュゼッペ・モラーロ)

生産者とのつながりを持つことにも積極的だ。イタリア語が話せる日本人との交流、シェフ仲間との情報交換から、理想的な関係をつくれるようになってきた。ジュゼッペシェフのスペシャリテともいえる“鴨のコンソメスープ 大磯町の有機野菜”も、大磯でオーガニック野菜を栽培する生産者との出会いから生まれたもの。

「大磯の生産者さんの畑に出かけることもあります。山ひとつぶんぐらいの土壌作りからこだわっているオーガニック野菜の畑で、この野菜のおいしさを存分に楽しめる料理を、という思いからスープを作りました。旬の野菜やハーブに、鴨のコンソメスープを注いで味わうのですが、隠し味ににんじんの皮を乾燥させてうまみを凝縮したものをスープに浸して。栄養価の高い皮まで無駄なく活用しています」

プライベートでも休日には生産者の顔が見える直売所で買い物をするのが習慣に。麻布十番や神楽坂など、生産者が定期的に出店する直売所へスクーターで出かけ、有楽町などのファーマーズマーケットにも行くのを楽しみにしているという。

「今まで学んできた料理哲学を守りながら、健康のための食、未来のための食を次世代にも伝えていきたい。そうすることで私たちの子どもの将来の食生活も守ることができると信じています」

Giuseppe Molaro(ジュゼッペ・モラーロ)

Giuseppeジュゼッペ・ Molaroモラーロ

イタリア料理店「ハインツ・ベック」エグゼクティブシェフ。イタリア・カンパニア州ナポリ生まれ。幼いころから父が経営するリストランテの手伝いをし、アイルランド、スペインでの料理修業を経て、ハインツ・ベック氏プロデュースのリストランテで腕をふるう。2014年、東京の『ハインツ・ベック』オープンに伴い来日。

取材日/2018年10月

ZENB initiative

「おいしい」で、国境を越え世界中に笑顔を届けたい

塩山舞 / 楽膳家

「おいしい」のために追求されたヴィーガンパンの世界

神林慎吾 / ベーカリー シェフ

寮母だから辿り着いた、家庭に活かせるアスリート食

村野明子 / 寮母

人の縁がつなぐ「地産地消」から生まれるいい循環

松井則昌 / 焼肉店 シェフ

日本と中国の伝統の調和が、新しい文化につながる

川田智也 / 中国料理 シェフ

四季に寄り添い旬を知ると、生活はもっと豊かになる

植松良枝 / 料理研究家

日本の魚を守るために、シェフにしかできないこと

佐々木ひろこ / Chefs for the Blue

おいしく食べるための教養や工夫で、食はもっと楽しくなる

マッキー牧元 / タベアルキスト

ジビエをきっかけに、おいしいの先まで知ってほしい

室田拓人 / フランス料理 シェフ

食と自分に向き合う精進料理の心を世界に伝えたい

青江覚峰 / 住職

洗練されたおいしさは、生産者のやさしさで成り立つ

松本進也 / 日本料理 料理長

食のストーリーへの共感から、エシカル消費は始まる

狐野扶実子 / 食プロデューサー

野菜の可能性を見直すことで、未来の食はさらに豊かになる

米澤文雄 / アメリカ料理 シェフ

食事のとり方ひとつで、心も体も健康になる

満倉靖恵 / 大学教授

人間のクリエイティビティで、サステナブルの先へ

君島佐和子 / 編集主幹

土地のものを活かし、土地のものを残す。それが役割

桑木野恵子 / 日本料理 料理長

包丁の切れ味ひとつで、おいしさはもっと引き出せる

藤原将志 / 包丁研ぎ師

食の大切さ、生産者の想いを、おいしさと共に伝えたい

川副藍 / フランス料理 シェフ

 自給自足中心で より満足のいく味を目指す

笹森通彰 / イタリア料理 シェフ

素材をそのままいただくシンプルな食事が健康へ導く

西﨑泰弘 / 病院長

おいしい日本の食は作る人と食べる人が一緒に作る

高橋義弘 / 日本料理 料理人

大きな生態系につながる一員として考え、料理をする

ジュリアン・デュマ / フランス料理 シェフ

その土地にずっと残っている料理が、本物のおいしさを持つ

小林清一 / イタリア料理 シェフ

新しい当たり前を作ることが未来の食文化を育む

沖大幹 / 水文学者・大学教授

食材選びは、シェフの責任で行う社会貢献活動

パスカル・バルボ / フランス料理 シェフ

本物の味わいを生かせば、未来のおいしさは豊かになる

垣本晃宏 / パティシエ

イタリア料理の精神アンティスプレーコを世界に広める

マッシモ・ボットゥーラ / イタリア料理 シェフ

“健康的な美食”は体と地球を守り、人生を楽しくする

ハインツ・ベック / ガストロノミーイタリアン シェフ

「古代の生活」にこそ、現代人が健康に生きるヒントはある

小林弘幸 / 大学教授

食の未来は、子どものリテラシーを上げれば変わる

小山薫堂 / 放送作家・脚本家

和食のルールに立ち返ることで健康を取り戻す

小西史子 / 大学教授

「感覚」を取り戻せば社会への視点が変わる

佐藤卓 / グラフィックデザイナー

世界に誇る日本の水産資源を守るために進むべき道がある

岸田周三 / フランス料理 シェフ

日本の魚と海の危機を伝える旗振り役として立ち上がる

石井真介 / フランス料理 シェフ

世の中の空気が変われば、解決できる食の問題がある

安中千絵 / 管理栄養士・フードディレクター

日本人に必要なのは、エネルギーとシンプルさを持つ食

大原千鶴 / 料理研究家

食の大切さを、自然に寄り添う意識を高めることで見直す

村山太一 / イタリア料理 シェフ

環境にいい「食べ方」は心身を満たす

西邨マユミ / マクロビオティック・ヘルス・コーチ

食の好循環が、豊かな世界を導く

佐藤祐造 / 医学博士

「おいしく使いきる精神」で100年先の食文化へつなぐ

髙良康之 / フランス料理 シェフ

ジュゼッペ・モラーロ

新しいおいしさ、安全なおいしさの探求

ジュゼッペ・モラーロ / イタリア料理 シェフ

秋山能久(あきやまよしひさ)

食のサステナビリティは未来を変える

秋山能久 / 日本料理 料理長

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ZENB JAPANの商品とは直接関係はありません。