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安中千絵/管理栄養士・フードディレクター

世の中の空気が変われば、解決できる食の問題がある

安中千絵 / 管理栄養士・フードディレクター

氾濫する情報を鵜呑みにせず、環境に負担をかけない食べ方を提唱していきたいですね。

環境にも体にも負担をかけない食べ方で食糧難を防ぐ

安中 千絵(あんなか ちえ)管理栄養士・フードディレクター

管理栄養士の資格を持ちながら、フードディレクターとして活動する安中千絵さん。日々、「食と健康」を考え続けている安中さんの視点から、日本を取り巻く食糧問題と、その背景について語っていただいた。

「昨今、恵方巻きをきっかけに食糧廃棄問題が話題になりました。日本は食品衛生の観点から、指定の期日を過ぎた食品は販売してはいけないと厳しく定められていますよね。安全を守る上で大切なことではありますが、食品の大量廃棄にも繋がっているのが現状

恵方巻きも、消費期限を過ぎたものは捨てざるを得ない。予約注文制にすればある程度解決できるはずですが、販売者側のコストが大きくなるので、難しいのでしょう。供給する側の都合を優先した大量生産の仕組み自体も問題なんです」

加えて、「飛び交う食の情報に惑わされないように」とも言う。

そもそも食と健康に関する情報は、はっきりとしたエビデンスのないものが多く出回っています。例えば昨今注目されている糖質ダイエットも、長期的に考えたら安全と言えるかはわかりません。本当に糖質が悪いものなら、人間に糖質を利用できる仕組みが備わっていることの説明もつきませんよね」

こういった情報は後発の研究で覆されることも少なくないという。

「脂肪がいい例ですね。以前は飽和脂肪が健康に悪く、なるべく不飽和脂肪酸を摂った方がいいと言われていました。しかし最近の研究では、結局どちらも摂りすぎると病気になりやすいことがわかってきています」

「捨てずに食べた方が美味しい」という空気を

安中 千絵(あんなか ちえ)管理栄養士・フードディレクター

社会全体で食料を大事にする機運が高まっている中で、まず消費者にできることは何か? それは家庭の食卓から「捨てずに食べた方が美味しい」という空気を作っていくことではないかと説明する安中さん。自宅では、調理家電を活用中だ。

「今は調理家電が発達している時代です。私自身も自動調理鍋を重宝しています。大きくカットした食材と調味料を入れてスイッチを押すだけで、煮込み料理やスープが完成してしまうんです。食材には、皮や種など捨ててしまいがちな部分に栄養が含まれていることもありますから、全部入りで。」

「調理家電などをうまく活用しながら『捨てずに食べた方が美味しい』、そんな価値観が広まるといいですよね」

現に、食に関する情報も受け取る消費者の意識に変化が出はじめている。

「一時期は、テレビが特定の食材を『いいものだ』と取り上げると、それだけを集中して食べて、結果的に具合が悪くなる人も出ていました。そういった経緯を経て、今は健康情報そのものから距離を置く消費者も増えています。視聴者は、テレビからの発信が正しいことばかりではないと思い始めている。本に関しても、しっかりしたエビデンスのないものは売れなくなってきているようです」

新たな食事法を試す際は、自分の体の声を聞くことが重要だと安中さんは言う。

何か新しい食事法を取り入れるなら、まず期間を決めて体調を観察してあげることが大事です。調子が良いなら続けて、変わらないのなら見直してあげる。体の変化を見極めてあげてください」

「結局、いろいろな食材を偏らず食べ続けた人が今も昔も長寿だということ。一生をかけて何を食べたか、それが一番重要だと思います」

専門家の知識を世間に伝える通訳のような役割になりたい

安中 千絵(あんなか ちえ)管理栄養士・フードディレクター

幼少期から世界6カ国に滞在したという安中さん。食への好奇心が強く、真新しい料理には特に関心を示す子供だった。

「子供の頃の記憶は、だいたい食べ物と紐づいていることが多いです。ドイツの幼稚園で生まれて始めて食べたチョコチップクッキーの味は今でも覚えていますね。

日本から送ってもらった黒い大きな羊羹を見たときは『なんだこれは!』と驚きました。食を通して各国の文化の違いを感じていましたね。」

本格的に料理に興味を持ったのは大学時代、将来を模索し始めた頃。ル・コルドン・ブルー東京校に入り、フランス料理・製菓を学んだ。

しかし当時の料理業界は、プロの料理人として女性は認められないといった偏見がまだ残っており、過酷な環境だった。そこで安中さんは料理人として、他にはない特色を身につけるため栄養学を学ぶことに。一般の大学を卒業後、女子栄養大学に再入学した。

何を食べたらどんな健康効果があるか、どの食べ物とどの病気に関連性があるのか。そういったことを私自身も当時の世の中もあまり知らなかったので、栄養学の学びは驚きの連続でした」

専門家と一般消費者には、食や栄養に対する知識の乖離がある。それは現在の活動のモチベーションにもなっている。

「栄養学は奥深い学問なので、研究者になろうと考えたこともありました。ただそれよりも、栄養学を学ぶにつれて、専門家と一般の方々の知識の差が気になってしまって。そこで、専門家の知識を世間に伝える通訳のような役割の必要性を感じました。世間に寄り添った形で、食と健康について伝える仕事がしたいなと思ったんです」

高い専門性と一般消費者に寄り添った目線で、これからの時代を生き抜くための「食と健康」を発信している安中さん。環境に負担をかけない食べ方や調理方法に気をつけて日々の買い物や食材選びをすること。それは結果、栄養バランスへの気遣いになり、健康な体へとつながるはずだ。

安中 千絵(あんなか ちえ)管理栄養士・フードディレクター

安中あんなか 千絵ちえ

管理栄養士・フードディレクター。東京都出身。ル・コルドン・ブルー東京校でフランス料理・製菓を習得後、女子栄養大学にて栄養学を学ぶ。大学院修了後は株式会社タニタなどで新規事業の企画開発、レストランプロデュースなどに携わる。その後独立し、フリーとして活動後、2016年に株式会社キャセロールを設立。
http://casserole.co.jp

取材日/2019年1月

ZENB initiative

新しい当たり前を作ることが未来の食文化を育む

沖大幹 / 水文学者・大学教授

食材選びは、シェフの責任で行う社会貢献活動

パスカル・バルボ / フランス料理 シェフ

本物の味わいを生かせば、未来のおいしさは豊かになる

垣本晃宏 / パティシエ

イタリア料理の精神アンティスプレーコを世界に広める

マッシモ・ボットゥーラ / イタリア料理 シェフ

“健康的な美食”は体と地球を守り、人生を楽しくする

ハインツ・ベック / ガストロノミーイタリアン シェフ

「古代の生活」にこそ、現代人が健康に生きるヒントはある

小林弘幸 / 大学教授

食の未来は、子どものリテラシーを上げれば変わる

小山薫堂 / 放送作家・脚本家

和食のルールに立ち返ることで健康を取り戻す

小西史子 / 大学教授

「感覚」を取り戻せば社会への視点が変わる

佐藤卓 / グラフィックデザイナー

世界に誇る日本の水産資源を守るために進むべき道がある

岸田周三 / フランス料理 シェフ

日本の魚と海の危機を伝える旗振り役として立ち上がる

石井真介 / フランス料理 シェフ

世の中の空気が変われば、解決できる食の問題がある

安中千絵 / 管理栄養士・フードディレクター

日本人に必要なのは、エネルギーとシンプルさを持つ食

大原千鶴 / 料理研究家

食の大切さを、自然に寄り添う意識を高めることで見直す

村山太一 / イタリア料理 シェフ

環境にいい「食べ方」は心身を満たす

西邨マユミ / マクロビオティック・ヘルス・コーチ

食の好循環が、豊かな世界を導く

佐藤祐造 / 医学博士

「おいしく使いきる精神」で100年先の食文化へつなぐ

髙良康之 / フランス料理 シェフ

ジュゼッペ・モラーロ

新しいおいしさ、安全なおいしさの探求

ジュゼッペ・モラーロ / イタリア料理 シェフ

秋山能久(あきやまよしひさ)

食のサステナビリティは未来を変える

秋山能久 / 日本料理 料理長

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